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妄想散文置き場、時々日記。小説リストは左からどうぞ。(R)は18歳以下は見ちゃ駄目よ☆です。
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Name:毎日がエイプリルフール!
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※BLとかパラレルとかはたまたイヤンなものとかあるんで図書館で閲覧とか公式見た後にすぐ飛ぶとかオンラインブクマとかは遠慮していただきたい…!あとBLとか腐ってないとことかからリンク貼る時はBLあるよとか明記してあげてください常識!




(ゴミ箱代わりにしてたから必要ないかと思ったけど手風呂からリンクつなげちゃったから一応……)
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2024/05/03(Fri) 22:21:52

 高校生探偵がこの世から消え、その代わりに現れた小学生も消え、江古田に一つ喫茶店が出来た。

 

 十一月。寒気は勢いを増すばかりの日々で、黒羽快斗は長いマフラーに顔をうずめた。そろそろ学ランとマフラーだけでは耐えられなくなってきているが、コートを出す手間も惜しい。しかしひょうと寒風が足元を吹き抜けて、快斗はどう押入れをひっくり返せば効率よくコートが取り出せるかを考え出した。
枯れ葉が視界を覆う並木道は、夕方の淡い赤に照らされている。通る人々は皆一様に下を向き、風に首を竦めてノロノロと歩いている。履き潰して底の薄くなったスニーカーは、コンクリートの冷たさをそのまま足の裏に伝えてくるようだった。
――こんな時はあそこに行くに限る。
思い出しただけで鼻歌混じりになる自分に、快斗は呆れながらも足を速めた。クラスメイトにも幼馴染にも母親にも教えていない、秘密の場所だ。
大通りから裏路地に入り更に道を折れ、崩れかけている灰色の階段を下る途中の茶けた壁に同化しそうな古びた扉。触れば軋みそうなそのドアは一見民家だが、その上には板切れで「Cafe」と掲げてあった。
見つけてくれなくて結構、と言わんばかりのその様相の店に興味を引かれ、見つけたその日にそのくぐりにくい扉を快斗は躊躇無くくぐり、以来マスターには顔を合わせれば嫌な顔をされるぐらいには常連だった。
機嫌良く快斗がその扉を開けば、カランカランというカウベルの音とともに静かに暖かい空間が快斗を包んだ。

「いらっしゃいま……、また来たのか」

「一日ぶり、マスター」

 細長い店内には、カウンター席しか備え付けられていない。その椅子もたったの5席しか用意されていないのだ。当然の如く店内には客は居らず、快斗を向かえたのは不機嫌そうなうら若いマスター一人である。カウンターの奥で座り、どうやら読んでいたらしい新聞を畳んで置きいかにも面倒そうに立ち上がり、快斗をあしらうかのようにヒラヒラと手を振った。
薄暗い店内はどちらかというとバーに近い様相だったが、メニューには酒は置いていない。正確に言えば置いてはあるのだが、それすら紅茶に軽く混ぜる程度のものだけだった。曰く、「酒を置くと客が面倒になる」とのことだ。
奥の方では暖炉がパチパチと火花を爆ぜている。ふらふらとそれに寄りながら、快斗はまきつけていたマフラーを取り払い、一つの席に腰かけた。

「いつもの?」

「や、今日はカフェオレで」

「へえ、夜遊びしすぎるなよ」

 交わす会話は親しみのあるもので、きっちりと上まで止められたシャツと黒のタイが大分大人びて見せているものの、マスターも高校生の快斗と殆ど変わらないぐらいの年齢に見える。声も随分と若い――いや、似ているのか? そういえば顔も似ている気がする。と、じっと快斗が見つめると嫌がるようにマスターは背を向けた。ついでのように、繊細な模様のえがかれたカップを手に取り、湯を張った鍋へそれを入れる。マスターの横顔に僅かな翳りを見つけて、快斗は眉を顰めた。

「それは、俺のセリフだな。ねえ、マスター」

 カウンターから乗り出すようなかたちで手を伸ばし、快斗はマスターの髪を軽く引いた。目を瞬かせたマスターに少し機嫌を良くしながら、ポーカーフェイスのまま快斗は寄せた眉をそのままに詰め寄った。

「昨日は何時間寝た? ちゃんと寝てんの? いっつも隈、酷いよ」

「良いんだよ客はそんなこと気にしなくて」

 ひらりと払われた手にムッと顔を歪めながらも、これ以上追求しても無駄な事を快斗は知っていた。払われたまま大人しく席に戻れば、仕方なさそうにマスターは笑う。
それでも、何も言ってくれないのだ。せめてその隈やダルそうな態度を改善してくれれば、快斗だってこんなに胸を痛めなくとも済むのに。
”それじゃあこんなところ来なければ良い”もう一人の自分がそんな風に囁いて、確かにそうだと毎回快斗も頷いている。だけれどこの温かだけれど静かな空間が、(例えばそれは湯の沸く音や暖炉の火の爆ぜる音、器具同士がぶつかる金属音だったり伏せ目に自分のためのコーヒーを用意するマスターの呼吸だったりで構成される、その全てが)、帰り道の快斗をいつだって誘惑するのだ。
そうして今日も此処に居る。

「ねえマスター」

「なんだよ」

「俺の名前、黒羽快斗っていうんだ」

「知ってる」

 定例のように繰り返される言葉がある。マスターの目の下にある隈と同じように。

「マスターの名前は?」

「さあ、なんだろうな。ほら、出来たぞ」

 カチャリ、上品な音を立てて快斗の前に淡い色のカフェオレが差し出される。快斗の一番好きな味のカフェオレだった。フワリと立った湯気と共に、コーヒーの苦い香りが快斗の鼻を擽った。
そっと手に取り、熱過ぎない温度のそれを口に含む。そうして、”いつになったら、”この言葉を、いつも快斗は飲み込むのだ。














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逃げてる工藤と頑張ってる黒羽。
ネタがとまらないので此処に放置。
時間と体力と気力があればまとめて中篇くらいで書き上げるかも。

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2009/01/19(Mon) 00:50:19
 ざらついたコンクリにつけていた頬が不意にぬるりと滑って、閉じていた瞼を開けば予想通り血の海が広がっていた。さっきまではそれほど広がっていなかったそれが、今では髪の先を赤く染め上げるほどに体の周りを埋め尽くしていた。あれほど汚したくなかった衣装も、始めからその色だったんじゃないかというほど真っ赤に染まり上がっている。
 走り回りすぎてどこの港かもわからない、しかし確実に数ヶ月は見つけてもらえないだろう倉庫にゴミのようにうっちゃって捨てられている。月下の怪盗の名前はどこにも見あたらず、埃まみれの蛍光灯すら照らしてくれない。
 馬鹿をしたことはわかっている。と言うより、始めから馬鹿だったのだ。無謀だとはわかっていた、いろんな人を巻き込んだのもわかっていた、これは罪であり罰だ。
 だくだくと溢れる血の海を眺めている。失い過ぎたのか酷く寒くて、おそらくは気を失わないのがおかしい状況なんだろうと思った。
 ふと思い立って、重たくてしょうがない腕を動かして携帯を取り出した。11桁の番号を押していく。呼び出し音が耳元で喚いて、口を開いた。


「あ、やっほー新一久しぶりってそうでも無い? やだなあちゃんと相手してよ、いやいや今度の土曜遊ぼうって言ってたじゃん。実はあれちょっと行けそうになくてさ、頑張れば行けるかもしんないけど慌ただしくなっちゃうかもだし。そんな約束なら始めからするなって? いやだってせっかく新一から誘ってくれたのにさ、あれ誘ったのは俺の方だったっけ。まあとにかくそんなことより代わりにいつ行くかってことの方が重要だよ新一。ええ、もう約束しないとか言わないでよそんな寂しいこと、ごめんごめん、ほんとごめん、ね。大好き愛してるだから許してもう一回だけ、」


 ぐらりと視界が歪んで言葉がとぎれた。まだ呼び出し音が鳴り響いている。ああさすがにもうそろそろ駄目なのかもしれないと感じ取った。指先が寒いなんて飛び越えたぐらいに冷たい。震えだしてしまいたいのをこらえながら携帯を握りしめた。


「俺と約束してよ新一」


 呼び出し音が鳴っているかどうかも最早わからないまま携帯を切った。通話の終了音が虚しく響く。
 届くよりは届かない方がずっと良い。何故ならもう俺には果たすことのできないことのうちの一つだからだ。本当なら今回の仕事が終われば会いに行こうかとも思っていた。
 今までずっと頑張ってきたから、最後くらいはこんな程度の虚言だって許される。本当はずっと呼びたかった名前。交わしたかった約束。
 意識が混濁してきて、けれど俺は余程幸せな気持ちで目を閉じた。






















「おいさっきの電話なんだよ、約束してよだなんて言われたってなんのことかわかんねーし。っつーかおまえ誰だ? 名前くらい言えよばーろーとりあえずそっち行ってやるから場所教えろ、なんか事件っぽいじゃねえか俺は探偵だから行かなきゃ駄目だろ、ばかきっど」
2009/01/16(Fri) 19:36:21

  ざわめいた夜空を見上げれば不穏な赤い月がぽっかりと浮かんでいた。住宅街は静かで、どこまでも平和だ。快斗は小さく嘆息した。
 両側を高い塀に囲まれながら、トツトツと歩いていく。放課後にコンビニに寄ったのが敗因だった。いやそれとも週刊の漫画雑誌を手に取ったところが過ちか。とにかく、いつもより遅い帰宅時間だ。
 心配はしていないだろう、と、家に居る母親を思う。こんな時間よりももっともっとずっと、世界の全ても眠ってしまったかのような時間に、少し前までの快斗はウキウキと出歩いていたのだ。こんな時間、まだまだ夜の始まりだ。
 三叉路が目の前に現れ、家まであと数メートルだということを教えてくる。ここを右に曲がり電柱と電灯それぞれ三つ過ぎた頃に、温かな家が待っている。
 快斗の世界はどこまでも平和だ。それなのに。
 
(工藤新一)
 
 思い出すだけで周囲の空気がざわめいた気がした。いや、弾んだのは自分の心臓か。学ランの胸あたりをごまかすように手のひらで強くぬぐい、大きく息を吸い、吐き出す。
 今朝の朝刊の一面は、平成のホームズ、最強の高校生探偵の名推理を褒め称えるものだった。
 その姿で顔を合わせたのはたったの一度。小学生の姿では両手で数えきれるくらい。それなのにあの不敵な碧眼は記憶の中で馬鹿みたいに鮮明で、凛と突き刺さるような嫌味な言葉の数々は擦り切れないレコードのようにグルグルと頭の中を回り続けている。
 
(平成のホームズ、高校生探偵、難事件、名推理、解決)
 
 今の快斗には程遠い言葉達だ。魅惑の女性の名を持つ赤い宝石をこなごなに壊しきり、白い衣装を脱ぎ去った、ただの頭の回る悪戯ガキな高校生男子に戻った、快斗には。
 こないだまで同じ場所に居たのだと思えば、組織に勝利した喜びよりも悔しさが先に立つ。キッドを脱いだ快斗には、どうしたってあの位置に届くことは無いのだろう。かなしいことに快斗はずばぬけて頭が良かったので、簡単にそのことがわかってしまう。
 
 立ち止まって、赤い月に手を伸ばした。
 届かない。当然のことだ。
 
(俺には、もう)
 
 下ろした手のひらを握り締めた。
 諦めてしまえば良いのに諦められない。
 夜を駆け抜けていた頃はあんなにも平穏で幸せな日常を望んでいたはずなのに、今ではあの切り裂くような夜風の冷たさが恋しくてたまらないなんて。
 
 歩き出すことすらできずにぼんやりと立ちすくんだまま。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
****************************
中途半端。

2009/01/15(Thu) 01:49:52
 最近、古泉の家に行くことが多くなった。理由はひどく明確で、こいつは実は生活破錠者だということが先日の訪問によって知れたからだ。
 部屋が汚いというわけではない。生活臭をとことん消したらこうなるんだろうというような閑寂なリビング、まだ俺の開けたことのない古泉の自室の小綺麗な扉、何かが持ち込まれた形跡の無い台所。ショールームだと言われても納得できるかもしれない、が、それはそれで生活破錠者だ。お決まりのように冷蔵庫はからっぽで、おまえ晩飯とかはどうしてるんだと訊いたら適当に外食ですと答えやがったので、やはり俺はお決まりのように簡単な飯をつくってやったのだ。毎日外食ってリッチっていうよりはどうせ毎回一人なんだろうからちょっと目に染みるものがあるぞ古泉。
 その後もなんとなく気になって晩飯を訊けば悪びれもなく外食だとかぬかし続けるので、買い込んだ食料も勿体ないという理由もあり甲斐甲斐しく古泉宅へ足を運んでいるという日常ができあがってしまった。無駄に料理の腕前が上がっている自分が哀しい。俺はかよいづ……これ以上の明言は避けておこう。
 今日もいつものように古泉宅を訊ね、ふと気になった部屋の隅の埃に「おまえ前回掃除したのいつだ」と訊けば笑顔のまま数秒固まりやがったので掃除大会となってしまった。古泉の自室はなんとなく開けては行けないような気がして(その先における様々な可能性のバリエーションを持ちうる腐海を想像してしまったからだ)掃除は行われなかった。何故か胸をなで下ろした古泉なんて俺は見ていないぞ、見ていない。
 そんなこんなしていればあっと言う間に時間は過ぎて、夕食をつくる暇が無くなってしまった。しょうがないのでいざという時の為に買っておいた袋詰めのラーメンをゆで上げる。ぱっと茹でて粉をかけてしまえば出来上がり、という簡単なラーメンでも、古泉は実に喜んだ。いや、そう喜ばれるといつも夕食をつくっている身としては微妙な心境なんだがな。
 換気の為に開けておいた窓から冷気が潜り込んできて体温を奪っていく。ラーメンから立ち上る湯気が古泉と俺の間にあって、古泉の輪郭はぼやけていた。ずずっとラーメンをすすって、寒さの所為かずずっと鼻をすすった。古泉が。
 その顔との妙なギャップに思わず箸が止まると、俺の視線に気付いたのか古泉が顔を上げた。

 「美味しいですねえ」

 そう言って笑った古泉の顔が、いつもの薄ら寒いスマイルより少し幼く見えたのは鼻がつまっているのか些か明瞭でない発音の所為だろうか。
 なんだか平和過ぎる光景に思えて、

 「そういう顔の方が似合ってるよ、おまえは」

 そう言ってやれば、ポカンとした古泉が首を傾げて、どう頑張ってもいつもの古泉には見えなくて、伸びたラーメンを食べる結末になるとわかっていても、俺はもう笑うしかできなくなってしまった。

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2007/12/06(Thu) 00:41:28
 室内とはいえ廊下は寒い。室内に入ってもその寒さは変わらず、しかし俺はそれに対する文句もひとまず脇に置いていそいそとリビングの中央テレビ前に寄っていく。蜜を求める蜂や蝶なんかはこういう気持ちだったんだろうかね。
 足先を布団の中に突っ込めば柔らかな暖かさが冷え切った足先を包み込む。そう、炬燵だ。電気仕掛けのそれは触れた傍から凍りきった肌を溶かしていく。溶けていく。
 「あなた今すごくエロい顔してましたよ」
 不穏な言葉の後すぐに不穏な暖かい裸の足先が俺の足に触れてくる。間違いのような接触はすぐに離れていったがこれはきっと故意だ。狭い炬燵の中確かに足同士が触れる確率は高いが、態とか否かは案外わかるものだ。
 睨みつけてやれば肩を竦めて笑いやがったので、嗚呼こいつバレてほしかったんだと知る。苛っとしたので冷たくなった足先で暖められた脹ら脛らしきものを思いっ切り摘んでやったら「すみません、悪戯心で」と案外簡単に謝ってきた。俺も別に男の足に触っていたがるような性癖は持ち合わせていなかったのですぐに離れる。足先もお陰で暖まったことだしな。
 ……変態と炬燵で向かい合っているなんて事実は直視したくなかったので、俺は離れた瞬間古泉がちょっと残念そうな顔をしたのを見なかった事にした。
 炬燵の中でぼんやりとする、というのは日本人の特権であり呪いでもあるだろうと思う。ここいらで蜜柑なんて欲しいなあなんて思い始めれば、駄目人間な自分を自覚してしまうのだ。これが人間を駄目にする。
 駄目だ駄目だと思いながら出られないのが炬燵の魔力だ。何やってんだかなあと幸せな気持ちでいると、こつりと足が当たる。「すいません」と慌てて古泉が言ったので態とではない事はわかりきっていたが、何となくこちらからもぶつけてみた。すると顔に似合わず案外こういう細かいところでは負けず嫌いな古泉がまた足をぶつけてくる。当然俺もぶつける。
 そんなこんなでドタバタしていたらまあ当たり前に上に乗っている机も揺れるわけで。まあ机が揺れればその上に乗っていた本やら鉛筆立てやらお茶やらも倒れたりするわけで。
 最終的には二人して溜息を吐くことになるのである。本当に何やってんだかなあ。

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2007/12/04(Tue) 06:15:04
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