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妄想散文置き場、時々日記。小説リストは左からどうぞ。(R)は18歳以下は見ちゃ駄目よ☆です。
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2024/11/24(Sun) 03:36:36

 黒羽快斗は此の世界中で最も魚というものを嫌っている。
 俺にして見れば同属嫌悪だ。

 複雑な経緯で知り合った黒羽という人間は、俺にとっては別世界の住人だった。IQが200ある時点で人間だとは思えない。しかしそれだけの頭を持っていながら馬鹿な事を遣ってのけて仕舞うのだ。理解出来ない。
 俺が気付いている事に黒羽が気付いているか如何かは定かでは無いが、奴は怪盗キッドなんてものまで遣って居る。悔しい事に証拠という証拠は未だ見付けて居ないのだが、しかし奴は怪盗キッドだ。黒羽以外が怪盗キッド何て訳が無い、というより、黒羽以外にあの奇天烈な役者をこなせる人間は居ないと思うのだ。
 此れで理解頂けただろうか、黒羽という人間は如何にも俺には理解外だ。探偵である俺に何かと付いて回って来るのも理解出来ない。何が面白くてそんな危ない橋を渡ろうと謂う気になるのか。

 黒羽は魚が是でもかと言う程嫌いだ。が、俺は黒羽自身水の世界の住人に思えて仕方が無い。それも深海魚だ。
 まだ人類は海の一番深いところまでは辿り着けて居ない。手の届かない位置。誰も行ったことの無い境地に、黒羽は住み付いている。
 黒羽の周囲に何があるのか、黒羽自身がどんな特性を持っているのか、俺達人間は其れを知る事は出来ない。出来たとしても、随分と先の事だ。少なくとも黒羽が死んで仕舞った後になるだろう。
 そんな暗闇の中を黒羽はあたかも「総て理解って居るのさ」と言わんばかりの笑顔で悠々と泳いで行って見せるのだ。時折水面に顔をちらつかせながら、其れでもその美しい尾ひれには決して触らせて呉れない。触れようと手を伸ばせば漆黒の水の中へひらりひらりと逃げて行ってしまうのだ。

 あれ程孤独の似合う滑りを纏った生き物は居ない。あれ程暗闇の似合う白を纏った生き物は居ない。

 もしかすると黒羽は自分の姿を知らないで居るのかもしれなかった。光の届かぬ場所では鏡ですらその姿を写して呉れないに違い無い。
 だから水面近くを漂う同属を見て、「嗚是が自分の行く末なのか」と嘆いているのかもしれない。
 そう思えば、あの恐怖に引き攣れた顔を見るのも悪く無いと思えてしまう、自分のサディスティックさに、笑えた。

 ……まあそんな小難しい事を考えずとも、あの恐怖に引き攣れた顔は、笑えるのだけれど。













インスタントカフェ http://www2.ttcn.ne.jp/~dodome/ic/
銀の色 なんとなくで選んだ、色を散らして 266「水に住む生き物」

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2007/11/15(Thu) 00:54:08

 正直なところ俺は彼の断続的に宙を滑空し生きているような様が羨ましくて堪らなかったのだ。だから白い翼を畳む事はできなかった。今でもキッドを遣っているのは鳥渡した我侭だ。

 彼、工藤信一は、先に述べたように断続的に滑空しながら生きている様な人物だ。天に昇りきって仕舞う訳でもない、地べたに這いずったままで居る訳でも無い。気付けば非日常という空中を滑っており、かと思えば日常に溶け込んで悠々と雑踏を歩いて居る。そんな人物だ。
 俺はといえばIQが200あってしまったりキッドをやらかしたりしては居るが所詮一般人だ。空を飛ぼうにも道具が必要で、日常に溶け込むにはほんの僅かな違和感が俺を苛んだ。
 俺は新一が羨ましかった。羨ましくて堪らなかったのだ。だからまだキッドなんてものをやっている。

 自分でも、馬鹿な人間だと理解っている。

 パンドラだって随分と前に見付かって、今は俺のベッドの中だ。黒い奴等から強奪した其れを綿密に粉々にし、それでも未だ不安でベッドの中の綿に紛れ込ませた。其れからというものずっと俺はパンドラの夢を見続けているがしかし、問題は其処ではないのだ。
 キッドを終わってしまえば俺は只の鳥渡頭の良い一高校生だ。地べたを這って空を見上げ、「俺もああ遣って飛んでいたのだ」と呟いて終わる日々が待ち受けている。
 しかし工藤新一は違う。どうやったって新一は事件に付きまとわれる。そして其れの解明を、犯人ですら新一に求めるのだ。
 (嗚、羨ましい)
 だから俺は羨望の眼差しを腹の底に隠しながら今日も夜の空を飛ぶ。意味も無く宝石を月光に翳し、そうして息を切らせて遣って来る新一を迎え撃つのだ。同じ空を滑空する物、怪盗キッドとして。
 (嗚、何て幸福、俺は未だ空を飛んで居られるのだ)

 (嗚、羨ましい)

 「ああ、うらやましい」



 

 

 

 

インスタントカフェ http://www2.ttcn.ne.jp/~dodome/ic/
銀の色 なんとなくで選んだ、色を散らして 266「空を飛ぶ生き物」

2007/11/15(Thu) 00:35:49

※古泉がレイちゃんでキョンがゲンドウさんな感じのパラレル。古泉が可哀想でキョンが酷人。













 「なんで俺がこんなことしなきゃならんのだ」
 「まあまあ、世界が崩壊しないためと思えば、易いものですよ」
 シューッ、と、刃が紙を切り裂く音が部室に響く。夕焼けを背にしながら僕と彼とで、来週ある涼宮さんのライブのチケットづくりをしていた。A4大の大きさの紙を短冊形に折っていき、カッターマットの上でカッターを滑らせていく。隣の彼が刃を滑らせて、その線が僅かに歪んでいたのが、何故だか妙に愛おしかった。
 (僕は、馬鹿だ)
 おまえが愛せば良いのはたった一人なのだ、と、それに近い事ばかりを叩きこまれた頭は、何故か違う人を選んでしまった。それもまた、やっかいな人だ。愛すべき人が愛した人を、僕は愛した。僕は、馬鹿だ。
 一生伝える事の無い想いを胸に秘めながら日々を過ごすというのはなかなか戦々恐々とするというか、常に神経を張り巡らさなければならないのでとてもたいへんだ。けれど時折こんなふうに与えられる二人きりの時間に、僕はとても幸せになれる。最早、これは愛と呼ぶ他ないのだろう。
 ガタリ、と音がした。見れば前傾になっていた姿勢を後ろに倒して、椅子の背に体重をかけるようなかたちで彼が背伸びをしていた。「倒れてしまいますよ」と声をかけようとしたところで、その喉の白さに思わず動きが止まる。気がそれてしまったのか、手がぶれてカッターの刃が深く僕の手を切りつけた。
 あ、と、思わず声がもれて、その声に反応したのか彼が後ろにそらしていた頭を戻した。手の甲から溢れだした血を見つめている僕の視線を追って、彼の視線が下がる。僕は逆に彼の顔を見上げた。
 「まあこの程度ならすぐに塞がりますよ、痕は残ってしまうかもしれませんが」
 妙に表情の無い彼に、何か嫌な予感めいたものが腹の中をざわりと通り抜けた。気の所為だろうと思うことにして、安心させようと僕は言葉を紡ぐ。
 不意に彼の手が僕の手に伸びた。触れた瞬間、ドクリと鼓動が大きく鳴り、僅かに顔が熱くなる。僕の手を掌に乗せ、検分するかのようにもう片方の手でそっと傷口の淵を撫でた。チリ、と走った痛みに、僕の喉が鳴る。彼の細い、それでも男らしい指に、喉が渇いていくのを感じた。
 「キョ「古泉」
 名前を呼んでしまう、危ういところで彼が僕の名を呼んだ。その色の無い響きにハッとする。何をやろうとしていたんだ僕は。笑顔を取り繕いながら、机の下で掌をきつく握った。
 「古泉、これは駄目だ」
 まっすぐな彼の視線を感じて、僕はハテと首を傾げた。彼の表情がいつになく硬い。硬いとういか、真面目というか。いつものように緩んだ目元はどこかへ消え去り、真面目すぎる瞳が僕を見つめていた。
 「痕が残ってしまうと駄目なんだ、その時点で古泉一樹では無くなってしまう」
 サッと、血の気が引いた気がした。
 「交換だ」
 彼の言葉が終わらないうちに、黒が僕を支配した。


 


 「おはようございます」
 「あら古泉君、おはよう。今日は早いのね」
 「ちょっと調子が良かったもので」
 「昨日はありがとう、助かったわ。まったくキョンの奴、あんなことぐらい一人でやりなさいよね」
 「いえいえ、滞りなく進みましたよ」
 「さすが副団長、そうでなくちゃ! …あ、カッターとかで怪我しなかった? あのマットちょっと古かったみたいだから」
 「いいえ、大丈夫でしたよ」
 「そうねえ……本当、手に怪我は無いみたい。いつもの古泉君の手だわ」
 「そうですね」
 「それにしても、本当に綺麗な手ね。私、古泉君の手、好きよ」
 「ありがとうございます」

2007/10/10(Wed) 22:40:50

 (残酷な人だ。)

 僕の呟いた言葉――上手い事呟けたかどうかは定かでは無い――をどう受取ったのか、それとも受取りさえしなかったのか、彼はぼんやりと空を見上げたまま何の反応も返さなかった。部室は冷たく冷やされていて、二人きりの体温では空気が温まってくれる筈も無い。寒さがじわりじわりと下の方から侵食してきていて、僕は微かに体の芯を震わせた。
 椅子の背にかけた体重を僅かに移動させたのか、ギシリとパイプ椅子が軋んだ。静かな部室にはその小さな音すら大きく響く。僕は彼を見た。彼は僕を見ていない。
 ――僅かながら語弊があったことを侘びよう。僕は彼を見たのではない。彼を見ていたのだ。見続けていた。そして彼は僕を見て居ない。ずっと。
 そのことに僕が気付いたのはほんの十分程前の事で、漸く先程、彼はずうっと前からそのことに気付いていたのだと、気付いた。僕の愚鈍な神経を恨み、そして感謝した。
 嗚呼、冷た過ぎる水が部室を埋め尽くしているようだった。水は、始めは温かく存在していたような気がする。彼の視線が水を冷やしているのだ。その所為で僕は身動き一つできず、言葉一つ発することすらできない。彼は悠々と椅子に腰掛け、水の温度を下げて続けている。
 僕はこのまま凍死してしまうのだろう。彼の冷たさに冷やされ続けて、水の中で水死体にすらなれずに、ただ笑顔を保ち続けながら、姿勢を良くしたまま、体の中心を冷やされて死んでしまうのだろう。
 その硬そうな唇すら奪えないまま。

 溺死ならば人工呼吸でもしてもえるのかもしれないが、僕は愛に溺れる前に凍死してしまう予定なので、死んでもまるで生きているかのようにそこらに放っておかれっぱなしになるのだろう。













is http://kratzer.fem.jp/is/
Refrain「さよなら世界あなたはいつも氷のようで」

2007/10/10(Wed) 21:58:28
  ぼんやりと浮かんだ夜の空にだらりだらりと二本の足が揺れている。あれは13の階段を上がってしまった、自分の末路の姿なのでしょう。

 罪を犯したのは生まれた瞬間でした。
 産声よりも先に自分の耳を支配したのは、男のものとも女のものともつかない獣のような悲鳴で、おかげで自分は生まれて初めての声を人の死に潰されてしまったのでした。

 その様に始まった、始まってしまった自分の生は今年で17年目になるのですが、自分の命が尽きてしまう前に一体如何程の人の死を、魂を、憎しみを目にするのでしょうか。それは不幸であり、幸福でした。絡み合った事柄を解いていこうとする、これは宿命であり、贖罪であり、ただの趣味でした。
 きっと今すぐにでも命を絶つべきなのでしょうが、如何せん自分はとても弱い人間だったので、今もこうして生きております。足や腕、首や顔にまで縋りついてくる数多の細く生白い腕を振り切る、その術を知っていても、それをするだけの力は持ち合わせておりません。

 細い指の中に紛れて、白い手袋の強い掌が心の臓を柔らかく押さえているのを疾うに気付いていましたが、それに逆らう気は毛の先ほどもありません。何故ならその手こそが罪を糾弾し、断罪し、救済してくれるのだと知っていたからです。
 いつかその手が背中に回され、とんと背中を押してくれるのを待ちわびているのですが、その手はじわじわと心臓を撫でるばかりです。「握りつぶされるのも悪くないだろう」そう言いながら、ゆるりと這い回る指先を放りっぱなしにしているのは、やはり自分が弱い所為なのでしょう。

 だらり、だらりと足が揺れている。糾弾を、断罪を、救済を待つ自分の顔がじぃと見つめてきている。此方に伸ばされた白い手は胸の中へ入り込み、如何やら心臓を掴んでいる様でした。
 そして自分も同じように、目の前の体の心の臓を掴んでいるのです。

 目の前のそれは自分と全く同じ姿形をしているのですが、唯一違う場所がありまして、それは片方の目にかけられた白いモノクルなのですが、やたらと近視感のあるそれを目の前のそれは決して外そうとはしないのです。
 だらりと垂れた足が揺れ、自分と全く同じ顔が、まるでまっとうな人のように笑いました。


 「       」
2007/10/05(Fri) 19:10:12
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