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妄想散文置き場、時々日記。小説リストは左からどうぞ。(R)は18歳以下は見ちゃ駄目よ☆です。
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2024/11/23(Sat) 22:49:13
 ざらついたコンクリにつけていた頬が不意にぬるりと滑って、閉じていた瞼を開けば予想通り血の海が広がっていた。さっきまではそれほど広がっていなかったそれが、今では髪の先を赤く染め上げるほどに体の周りを埋め尽くしていた。あれほど汚したくなかった衣装も、始めからその色だったんじゃないかというほど真っ赤に染まり上がっている。
 走り回りすぎてどこの港かもわからない、しかし確実に数ヶ月は見つけてもらえないだろう倉庫にゴミのようにうっちゃって捨てられている。月下の怪盗の名前はどこにも見あたらず、埃まみれの蛍光灯すら照らしてくれない。
 馬鹿をしたことはわかっている。と言うより、始めから馬鹿だったのだ。無謀だとはわかっていた、いろんな人を巻き込んだのもわかっていた、これは罪であり罰だ。
 だくだくと溢れる血の海を眺めている。失い過ぎたのか酷く寒くて、おそらくは気を失わないのがおかしい状況なんだろうと思った。
 ふと思い立って、重たくてしょうがない腕を動かして携帯を取り出した。11桁の番号を押していく。呼び出し音が耳元で喚いて、口を開いた。


「あ、やっほー新一久しぶりってそうでも無い? やだなあちゃんと相手してよ、いやいや今度の土曜遊ぼうって言ってたじゃん。実はあれちょっと行けそうになくてさ、頑張れば行けるかもしんないけど慌ただしくなっちゃうかもだし。そんな約束なら始めからするなって? いやだってせっかく新一から誘ってくれたのにさ、あれ誘ったのは俺の方だったっけ。まあとにかくそんなことより代わりにいつ行くかってことの方が重要だよ新一。ええ、もう約束しないとか言わないでよそんな寂しいこと、ごめんごめん、ほんとごめん、ね。大好き愛してるだから許してもう一回だけ、」


 ぐらりと視界が歪んで言葉がとぎれた。まだ呼び出し音が鳴り響いている。ああさすがにもうそろそろ駄目なのかもしれないと感じ取った。指先が寒いなんて飛び越えたぐらいに冷たい。震えだしてしまいたいのをこらえながら携帯を握りしめた。


「俺と約束してよ新一」


 呼び出し音が鳴っているかどうかも最早わからないまま携帯を切った。通話の終了音が虚しく響く。
 届くよりは届かない方がずっと良い。何故ならもう俺には果たすことのできないことのうちの一つだからだ。本当なら今回の仕事が終われば会いに行こうかとも思っていた。
 今までずっと頑張ってきたから、最後くらいはこんな程度の虚言だって許される。本当はずっと呼びたかった名前。交わしたかった約束。
 意識が混濁してきて、けれど俺は余程幸せな気持ちで目を閉じた。






















「おいさっきの電話なんだよ、約束してよだなんて言われたってなんのことかわかんねーし。っつーかおまえ誰だ? 名前くらい言えよばーろーとりあえずそっち行ってやるから場所教えろ、なんか事件っぽいじゃねえか俺は探偵だから行かなきゃ駄目だろ、ばかきっど」
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2009/01/16(Fri) 19:36:21
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