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妄想散文置き場、時々日記。小説リストは左からどうぞ。(R)は18歳以下は見ちゃ駄目よ☆です。
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2024/11/23(Sat) 22:59:41


 カチリ、カチリと音がする。俺と古泉だけしか来ていない部室というのはやたら静かだった、から、その音はやたら大きく聞こえていた。
 オセロを裏返す音でもない、俺が発しているわけでもない、何かそれらしき発音体があるわけでもない。ならばどこから――なんて、考えるまでもない。
 元凶は目の前の優男だ。

「何の音だ、それは」

「はい?」

 古泉は顔を上げた。同時にオセロをめくる手も止まってしまったので、俺は視線でそれを促す。パタリ、パタリ。二枚だけ、黒が白になった。

「さっきからカチカチカチカチ、何なんだ」

「えっと……」

 変わらない笑顔の、眉間に微かに皺が寄った。気づいていなかったのだろうか?
 カチリ、また音がした。

「ほら」

「ああ、」

 納得したかのように古泉が頷いて、机の下に隠されていた左手が取り出された。それから人差し指と親指が合わさり、爪が爪と指の間に入り込むように重なって―――カチリ。
 勿体ぶるように開けられた間の後に鳴った聞き覚えのある音に俺は「それだ」と声を上げた。
 自分の駒を手に取り、一見すれば罠かと思えるほどの大穴に俺は黒を置いた。それまで白4:黒6ぐらいだった駒の割合が、一気に2:8ぐらいまで差が開かれていく。
 頭上から苦笑が降ってきて、俺は視線だけ上げて古泉を見た。

「何だよ」

「いえ、自分でも気づかなかった癖を、まさかあなたに気づかれるとは思わなかったので」

「どういう意味だ」

「そのままの意味ですよ」

 ニコリ、古泉が笑ったすぐ後に、またカチリと音がしたような気がしたが、俺のオセロをめくる音にかき消されて曖昧になってしまった。








(それは小さな悲鳴)
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2007/08/05(Sun) 12:00:49
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