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妄想散文置き場、時々日記。小説リストは左からどうぞ。(R)は18歳以下は見ちゃ駄目よ☆です。
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2024/11/24(Sun) 02:30:18

 (実に興味深い生き物共だこと)

 昔から彼――そう、かの名探偵工藤新一――には、そういう兆候が見え隠れして居た。無謀なちょっかいを出して喰らった罰ゲームで、私と同じく体を小さくされた頃が二番目に酷かった。一番目は何時か、というと、今現在だ。進行形で。
 きっと工藤君自身に尋ねて仕舞えば「あれは演技だ」と不貞腐れた表情で答えてくれるのだろうけれど、私にはどの工藤君も、工藤君自身には見えなかったのだ。毛利さんの前での”コナン君”、探偵団での”コナン君”、私の前の”工藤新一”、事件を目の前にした”平成のホームズ”及び”警察の救世主”。いつだって真実なんて一つでは終わらない。どれもこれも真実ばかり。
 漸く元の体を取り戻して、漸く彼も一人に収束するのだろうと思っていたら、其れは私の勘違いだった。

 工藤君が元の体を取り戻して、其れから其の隣に居座るようになったのが、黒羽快斗という人間だった。

 彼も工藤君と同じように複数だった。私の前での”黒羽君”、工藤君の前での”黒羽”、幼馴染の前での”快斗”、夜の中での”確保不能の怪盗キッド”。
 二人共それぞれの役柄をすんなりと何の問題も無くこなしてしまうものだから(これだから妙に頭の回る人間は嫌いなの)(そう、其れには私も含まれている)、よくよく目を凝らして居ないと見逃してしまう大きな変化。

 そうしてまた彼等は増殖を続けて居る。
 工藤新一の考察する黒羽快斗、黒羽快斗の視認する工藤新一、工藤新一の求める黒羽快斗、黒羽快斗が理解して居ると思っている工藤新一。
 きっと今此の瞬間でさえ、また彼等は増殖してるのだろう。

 (実に興味深い生き物共だこと)
 (暇つぶしに丁度良い位よ)













インスタントカフェ http://www2.ttcn.ne.jp/~dodome/ic/
銀の色 なんとなくで選んだ、色を散らして 266「恋で増える生き物」

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2007/11/15(Thu) 01:25:54

 黒羽快斗は此の世界中で最も魚というものを嫌っている。
 俺にして見れば同属嫌悪だ。

 複雑な経緯で知り合った黒羽という人間は、俺にとっては別世界の住人だった。IQが200ある時点で人間だとは思えない。しかしそれだけの頭を持っていながら馬鹿な事を遣ってのけて仕舞うのだ。理解出来ない。
 俺が気付いている事に黒羽が気付いているか如何かは定かでは無いが、奴は怪盗キッドなんてものまで遣って居る。悔しい事に証拠という証拠は未だ見付けて居ないのだが、しかし奴は怪盗キッドだ。黒羽以外が怪盗キッド何て訳が無い、というより、黒羽以外にあの奇天烈な役者をこなせる人間は居ないと思うのだ。
 此れで理解頂けただろうか、黒羽という人間は如何にも俺には理解外だ。探偵である俺に何かと付いて回って来るのも理解出来ない。何が面白くてそんな危ない橋を渡ろうと謂う気になるのか。

 黒羽は魚が是でもかと言う程嫌いだ。が、俺は黒羽自身水の世界の住人に思えて仕方が無い。それも深海魚だ。
 まだ人類は海の一番深いところまでは辿り着けて居ない。手の届かない位置。誰も行ったことの無い境地に、黒羽は住み付いている。
 黒羽の周囲に何があるのか、黒羽自身がどんな特性を持っているのか、俺達人間は其れを知る事は出来ない。出来たとしても、随分と先の事だ。少なくとも黒羽が死んで仕舞った後になるだろう。
 そんな暗闇の中を黒羽はあたかも「総て理解って居るのさ」と言わんばかりの笑顔で悠々と泳いで行って見せるのだ。時折水面に顔をちらつかせながら、其れでもその美しい尾ひれには決して触らせて呉れない。触れようと手を伸ばせば漆黒の水の中へひらりひらりと逃げて行ってしまうのだ。

 あれ程孤独の似合う滑りを纏った生き物は居ない。あれ程暗闇の似合う白を纏った生き物は居ない。

 もしかすると黒羽は自分の姿を知らないで居るのかもしれなかった。光の届かぬ場所では鏡ですらその姿を写して呉れないに違い無い。
 だから水面近くを漂う同属を見て、「嗚是が自分の行く末なのか」と嘆いているのかもしれない。
 そう思えば、あの恐怖に引き攣れた顔を見るのも悪く無いと思えてしまう、自分のサディスティックさに、笑えた。

 ……まあそんな小難しい事を考えずとも、あの恐怖に引き攣れた顔は、笑えるのだけれど。













インスタントカフェ http://www2.ttcn.ne.jp/~dodome/ic/
銀の色 なんとなくで選んだ、色を散らして 266「水に住む生き物」

2007/11/15(Thu) 00:54:08

 正直なところ俺は彼の断続的に宙を滑空し生きているような様が羨ましくて堪らなかったのだ。だから白い翼を畳む事はできなかった。今でもキッドを遣っているのは鳥渡した我侭だ。

 彼、工藤信一は、先に述べたように断続的に滑空しながら生きている様な人物だ。天に昇りきって仕舞う訳でもない、地べたに這いずったままで居る訳でも無い。気付けば非日常という空中を滑っており、かと思えば日常に溶け込んで悠々と雑踏を歩いて居る。そんな人物だ。
 俺はといえばIQが200あってしまったりキッドをやらかしたりしては居るが所詮一般人だ。空を飛ぼうにも道具が必要で、日常に溶け込むにはほんの僅かな違和感が俺を苛んだ。
 俺は新一が羨ましかった。羨ましくて堪らなかったのだ。だからまだキッドなんてものをやっている。

 自分でも、馬鹿な人間だと理解っている。

 パンドラだって随分と前に見付かって、今は俺のベッドの中だ。黒い奴等から強奪した其れを綿密に粉々にし、それでも未だ不安でベッドの中の綿に紛れ込ませた。其れからというものずっと俺はパンドラの夢を見続けているがしかし、問題は其処ではないのだ。
 キッドを終わってしまえば俺は只の鳥渡頭の良い一高校生だ。地べたを這って空を見上げ、「俺もああ遣って飛んでいたのだ」と呟いて終わる日々が待ち受けている。
 しかし工藤新一は違う。どうやったって新一は事件に付きまとわれる。そして其れの解明を、犯人ですら新一に求めるのだ。
 (嗚、羨ましい)
 だから俺は羨望の眼差しを腹の底に隠しながら今日も夜の空を飛ぶ。意味も無く宝石を月光に翳し、そうして息を切らせて遣って来る新一を迎え撃つのだ。同じ空を滑空する物、怪盗キッドとして。
 (嗚、何て幸福、俺は未だ空を飛んで居られるのだ)

 (嗚、羨ましい)

 「ああ、うらやましい」



 

 

 

 

インスタントカフェ http://www2.ttcn.ne.jp/~dodome/ic/
銀の色 なんとなくで選んだ、色を散らして 266「空を飛ぶ生き物」

2007/11/15(Thu) 00:35:49
  ぼんやりと浮かんだ夜の空にだらりだらりと二本の足が揺れている。あれは13の階段を上がってしまった、自分の末路の姿なのでしょう。

 罪を犯したのは生まれた瞬間でした。
 産声よりも先に自分の耳を支配したのは、男のものとも女のものともつかない獣のような悲鳴で、おかげで自分は生まれて初めての声を人の死に潰されてしまったのでした。

 その様に始まった、始まってしまった自分の生は今年で17年目になるのですが、自分の命が尽きてしまう前に一体如何程の人の死を、魂を、憎しみを目にするのでしょうか。それは不幸であり、幸福でした。絡み合った事柄を解いていこうとする、これは宿命であり、贖罪であり、ただの趣味でした。
 きっと今すぐにでも命を絶つべきなのでしょうが、如何せん自分はとても弱い人間だったので、今もこうして生きております。足や腕、首や顔にまで縋りついてくる数多の細く生白い腕を振り切る、その術を知っていても、それをするだけの力は持ち合わせておりません。

 細い指の中に紛れて、白い手袋の強い掌が心の臓を柔らかく押さえているのを疾うに気付いていましたが、それに逆らう気は毛の先ほどもありません。何故ならその手こそが罪を糾弾し、断罪し、救済してくれるのだと知っていたからです。
 いつかその手が背中に回され、とんと背中を押してくれるのを待ちわびているのですが、その手はじわじわと心臓を撫でるばかりです。「握りつぶされるのも悪くないだろう」そう言いながら、ゆるりと這い回る指先を放りっぱなしにしているのは、やはり自分が弱い所為なのでしょう。

 だらり、だらりと足が揺れている。糾弾を、断罪を、救済を待つ自分の顔がじぃと見つめてきている。此方に伸ばされた白い手は胸の中へ入り込み、如何やら心臓を掴んでいる様でした。
 そして自分も同じように、目の前の体の心の臓を掴んでいるのです。

 目の前のそれは自分と全く同じ姿形をしているのですが、唯一違う場所がありまして、それは片方の目にかけられた白いモノクルなのですが、やたらと近視感のあるそれを目の前のそれは決して外そうとはしないのです。
 だらりと垂れた足が揺れ、自分と全く同じ顔が、まるでまっとうな人のように笑いました。


 「       」
2007/10/05(Fri) 19:10:12

 「そもそもね、私じゃあ駄目だったのよ」

 綺麗なため息を吐きながら私の親友はポツリと零した。
 その一言は大分前に漸く戻ってきたあいつと、その大分前の少し前にマイフレンド・蘭に言ったセリフを思い出させて、私の腹の中を非常に熱くさせた。ドロドロ。いつか絶対殴ってやる。もう殴ったけど。

 「何よ、また何か言われたの?」

 「……ううん、違うの」

 自分でもわかるぐらいに鼻息荒く訊ねてやると、随分意気消沈した様子で蘭は首を振った。見てるこっちが哀しくなってしまうぐらいに諦めの浮かんだ笑顔で、私の目に視線を寄越す。
 この綺麗な目を独り占めできる筈だった男は、その権利をあっさりと放棄しやがったのだ。腹立つ。

 「ただ気付いたのよ、あいつ、私じゃあ駄目だったの」

 「何でよ」

 自分を卑下するようなセリフは私はあんまり好きじゃなかった、から、眉を吊り上げて質問を重ねてやれば、慌てた様子で蘭は手を振った。それに少し満足しながら、それでも吊り上げた眉を下げないでいると、蘭の視線は伏せられる。

 「私だったら、きっと他の誰にだってなれるし、なれないのよ」

 不可解なことを言い出した親友に首を捻れば、苦い苦い笑い方で、優しく微笑まれた。
 何だって言うのよ、あいつは。

 「そういうことなの」

 蘭の言ってることは私には理解外だったし、きっとそれは蘭にしか理解できないものだったのだろうと思う。だから私はとりあえず、今理解できることつまりは蘭が意気消沈していることの原因のあいつを、今度会ったら街中だろうと廊下だろうと警察署の前だろうと全校朝礼の真っ最中だろうと殴り飛ばしてやることに決めたのだった。












嘘つき、濡れる http://nobara.chu.jp/lie/
「唯一がほしいんだって」

2007/08/10(Fri) 02:22:23
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