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妄想散文置き場、時々日記。小説リストは左からどうぞ。(R)は18歳以下は見ちゃ駄目よ☆です。
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2024/11/23(Sat) 20:47:28
 ちょっと旅行に行ってくる、と、新一が家を出たのは約一週間前だ。嵐に閉ざされた孤島で高校生探偵事件解決!の記事が新聞に載ったのは二日前。帰ってくる予定だったのは昨日だ。そして俺は家にも帰らず工藤邸で新一の帰りを待っている。自宅には学校の荷物を取りに帰ったぐらいで、生活の殆どを工藤邸で過ごして居る。理由は一つだ。工藤新一が心配過ぎたので。
一日帰りが伸びる、なんてことは普通なら時々あるかもしれない。そう大して心配することでもない。しかし相手は工藤新一だ。一歩外に出れば悲鳴が上がり、どこぞに遊びに行けば連続殺人事件が巻き起こったりする。連絡も無しに一日帰りが伸びるともなれば、確実に何かしらの組織だかなんだかの陰謀やらに巻き込まれていそうなのだ。

そんなわけでそわそわした日曜の朝を迎えている。帰宅予定は土曜の夜。現在日曜早朝。窓の外では平和に雀がチュンチュン鳴いている。カーテンを開けてあまりに天気が良かったので、落ち着かずに意味もなく変なステップを踏んでみたりした。
トントンとジャンプしながら玄関へ向かう。やはり靴は一足無い。3度目になる靴による帰宅の有無を確認してから、落ち着かないまま台所へ向かった。
冷蔵庫の中身は家主が居ないため揃っている(というのも、新一は簡易に食えるものを置けば置いただけ片っ端から食べていくくせ、しかし肉や野菜の材料には全く手をつけない。その所為であっという間に冷蔵庫の中身が駄目になっていくのだ)。適当に卵とベーコンを取り出して朝ご飯の支度なんぞをし始めた。工藤邸に通い始めてから黒羽快斗の料理の腕は右肩上がりだ。いっそマジシャンじゃなくてシェフにでもなってやろうかという勢いだ。ならないけど。
ジュウジュウと音を立てて跳ねる卵を見ながら、もしも、と考えてみた。黒の組織は二人で力を合わせて半ば壊滅状態まで追い込んではいる。今は時期じゃないと見てそこら辺の活動は控えてはいるが、もしかすると最後の抵抗ということで新一に対して何事かを謀ったのではないだろうか。誘拐とか。誘拐。
考えていたら卵が焦げた。

半分黒くなった卵とベーコン、トーストをリビングのソファでむしゃむしゃやりながら、いやいやと考える。誘拐だったらおそらく新一なら土曜のうちに片付けてしまうだろう。なんせ孤島での連続密室殺人事件の後なので、テンションは最高潮の筈だ。そんな新一が大人しく誘拐されっぱなしとは考えにくい。ならば他に何が、と考えて、うっかりストーカー説を考えてしまった。
同じ顔をしているので何ともといった感じだが、整った顔をしている新一は随分とおもてになる。うっかり有名高校生探偵なんてことまでやらかしているので知名度は抜群だ。女のファンも多いが男のファンも多い。そう、やっかいなのは男のファンの方なのだと、新一の友人をしてみて実感した。
女性のファンはなんだかんだ言ってファンなのだ。アイドルかっこいいと同じ次元で新一様かっこいいなんて言ってるから、いくらファン人数が多いからとはいえそれは恋愛対象にはならないということだ。権勢しあってもいてくれているので、統制が取れている。
しかし男はまず憧れから入り、うっかり友人なんてものになれてしまったりする。それでもって新一はかっこつけなので、そういうちょっとした友人ならば憧れられたら憧れられたままの新一で接してしまうので、且つかっこつけのくせにちょっと生活が自堕落など抜けていたりするところもあるので、且つ危なっかしいので、あとサッカーのことになるといきなり可愛くなりだすので……要するに、恋愛圏内に入ってしまうことが多いのである。
こと恋愛になると、事件での洞察力はどこいったと言わんばかりの鈍感っぷりを発揮される新一様である。当然相手の気持ちにも気付かないままサッカーの試合に勝てば抱きついたりほおずりしたり感動のあまりあまつさえキスなんかぶちかましてしまったりするのだ。そりゃ勘違いもするわ。この野郎。
……閑話休題。とにもかくにもそんな人らに絡まれていたとしたなら。家とかに連れ込まれていたとしたなら。凶悪犯なら存分に黄金のおみ足を繰り出す新一だが、自分の事を好いてくれている一般市民にならどうだ。さらにそれが自分の友人だったなら。
そんなこんな考えていたら、トーストの上に載せていた卵がベーコンもろとも床に落ちた。

汚れた床を掃除していたら、テーブルに置いていた携帯が大音量で鳴り出した。飛びついて携帯を取ると新着メールが一件。
”鍵開けろ”
当然新一様からである。安心したのと呆れたのと憤りが綯い交ぜになりつつ、玄関までドタバタと走った。怪盗キッドの影など微塵も無い走り方だが致し方ない。なんせ新一様のお帰りなのだ。
しかし無事に帰ってきたようで良かった。誘拐にすれ家に連れ込まれたにすれ、帰ってきたということは何らかの解決をしてきたのだろう。うんうんと安心しながらドアの鍵を開け、ガチャリとノブを回して、扉を開いた。
閉じた。
「おいこらてめえ閉めてんじゃねえよ!」
「どちら様ですかここは工藤さんちの新一君の家ですよ!!」
「ばーろぉ俺が新一だ!!」
「どっちかっていうとあんた新子さんでしょう!!!」
「うっせえ!!!」
勢いで扉が向こうに持って行かれ、ドタンとすっころぶ姿が見えて思わず慌てて近寄って後悔した。はだけた胸元からバッチリ見えてしまったのだ。
……ふくらんだ胸が。
「娘溺泉に溺れましたとか言うなよ……」
「ああそうそう、なんか中国で泉に放り込まれてさあ」
「おおおおいいいい!!!」
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2009/06/07(Sun) 00:03:35
 月が顔を出す頃になってようやく新一は目を覚ます。
日の光の中じゃ生きられない体なのだと、彼の両親が言っていた。そういう皮膚を持って生まれてしまったのだと。なので新一は太陽を知らない。だから新一の皮膚は驚くほど白く、触れるのすら躊躇う程透明だった。

まだ太陽が沈みきらない夕方に、俺は工藤邸を訪れる。新一が起きる少し前に到着しておけば、いくらかでも長く遊べるだろうという魂胆だ。俺は新一が好きだったので。
年頃の子と遊べないんじゃかわいそうだわ、と、知り合いのつてで会わされたのは約三ヶ月前だ。週に二回会いに来て、遊んでやってくれと頼まれた。始めは割の良いアルバイト程度にしか思って無かったが、今じゃもう日課になってしまっている。お金だってもう要らないと言ったのだが、彼の両親は頑固に払うといってきかなかったので、ありがたく今もちょうだいはしている。(そして結局、そのお金は殆ど、新一と食べたいものとか見たいものとかやりたいゲームとかに費やされるのだ。還元はできている、ように思う)
ベルを鳴らすこともなく、合い鍵で工藤邸にあがりこむ。家主の起きていない工藤邸は恐ろしく暗く、手探りで玄関の明かりをつけた。歩きながら屋敷の明かりを点けていく。
二階に上がると一つの部屋のドアが開いていた。不精者め、ため息を吐いてそこへ向かう。
そうして部屋の中に眠るのは一匹のクラゲだ。
ベッドランプで薄明かりに照らされた部屋の中、壁にそうようにしてベッドが置いてある。部屋だけは普通の、一般男子高校生と何ら変わりないような部屋だ。
けれど、ベッドに埋もれた腕は白すぎていっそ透明なのだ。いつか本当にこのまま透けて透明になってクラゲにでもなってしまうんじゃないかと、ちょっと不安に思っている。
閉じられた瞼が小さく揺れて、仰向けだった体がグルンと横を向いた。ちょうどよくこちら側を向いてくれたので、ベッドの横に座り込んで間近でその顔を眺めてみる。腕も白ければ頬も当然真っ白だ。触るのすら躊躇って、ちょっと息を吹きかけてみた。(その行為すら新一を霧散させてしまいやしないかと、すこしやるのに勇気が要った)
睫が震え、ぼんやりとした瞳が開かれる。日本人なのに、黒すぎる所為か薄青く見える瞳は起き抜けの所為か少し濡れていた。零れてしまいそうだなあ、と思いながら見ていると、だんだん目の光がハッキリとしてくる。

「……何してんだ、おまえ」

開口一番にそれである。
見た目は綺麗なのになあ、とため息を吐いたら軽くチョップをかまされた。ベッドの上で伸びをする姿は健康的にしか見えないが、聞いた話だと生きていることすら奇跡だという。この病気を患って、この年まで生きていられた例は殆ど無いらしい。

「今日は、」

実を言うと俺は蛍光灯の下の新一よりも、月の下の新一の方が好きだった。その方がより夢の中の生き物のようで、ああ、確かにこの生き物が存在することは奇跡だなあと思えるからだ。
散歩する姿で感動できるというのはなかなか無いことだ。

「今日は外に出ないのか?」

新一の周りは本で埋もれている。何冊、どころじゃない。何十冊と転がっている。
することが無い時はずっと本を読んでいるらしい新一は、異常なぐらいに博識だ。人間辞書、生き字引、そんな形容をされても過言ではないと思う。
細い指を伸ばして新一が手近な洋書をパラパラとめくりながら、どうでも良さそうな視線を投げかけてくる。

「そうだな……まあ、特に用事も無えし、今日は家に居る」

「ちぇ」と言うと、あきれたような視線が投げられた。お前は昼間も外に居んだろ、と言わんばかりの。いやまあ何度も言われたのだが。

「用事がありゃ外に出んの?」

「まあなあ。……怪盗KIDでも出れば、」

耳慣れない名前だ。首を傾げた俺に、「ああ、そうか」と新一は何かを理解したらしい。
枕元に積んである新聞をガサガサとあさって、だいぶん古いものを取り出してきた。第一面を広げて渡される。見出しには、「怪盗KID、予告状届く!」とあった。写真には白いタキシードにマント、シルクハットにモノクルなんていかれた格好をした奴が写っていった。

「数年前に出没してたらしいんだけどな。会ってみたかったなあ」

犯罪者に会ってみたいとはどういうことだろうと、今度はこっちがあきれてみた。まあしょうがないかと周りに散らばった本を見る。八割が推理小説で、中には江戸川乱歩作品もいくつかあった。
数年前に出た泥棒、そんな奴居たかなあ。記憶をたぐりながら新聞を眺める。3年前くらいのそれは古ぼけて写真もかすれていたが、なんとなく見覚えはあるような気がした。うぅん、居たか?










***
ムーンライト・ジェリーフィッシュのパロディ。読みたい………誰か書かないかな…←
2009/02/25(Wed) 03:55:39
 もともと薄い色をしていた唇を、すいすいと真っ赤な色が上塗りしていく。真剣に鏡を見つめる表情が推理している時と同じくらいまっすぐで、新一はこういう貌をしている時が一番綺麗だと実感した。目的に突き進んで生きていくものは、とても美しいと思うのだ。
有希子さんの部屋は美しい装飾品だらけで、今新一が座っているのも凝ったバラの彫刻がなされた美しい銀の鏡台だった。今その中に映るのはいつもの新一ではない。俺が、黒羽快斗が、いや怪盗KIDが手ほどきした女装の新一がその中には映り込んでいる。

頼まれたのは突然だ。何しろ事件現場が女性しか入ることの許されない古城だとか洋館だとか要塞だとかで、警察すらすぐに中に入ることができなかったらしい。勿論呼ばれた新一も門前払いだ。
もともと同じ顔のおかげか、はたまた女性的な――それと同じ顔をしている自分は少し複雑なのだが――顔をしている所為か、大した苦労をすることなく女装に成功している。カツラも被って女性ものの服を着て、あとは仕上げのメイクだけだ。

綺麗な口角をした唇に鮮やかな赤が塗り終わり、新一は肩越しにこちらを振り返った。もともと長かった睫がマスカラで強調されて、瞳がひどく耽美に映る。「どうだ」と口の動きだけで問われて、ちょっとぐらっときた。
同じ顔同じ顔。自分に思い込ませながら、「良いんじゃないか」と返す。適当に返したのがばれたのか不機嫌そうに唇を尖らせて、鏡の中の自分に向き直った。
ルージュをひいた薄い唇の残像が、瞼の裏に焼き付いて離れない。
どうも最近おかしいなあとは思っていたのだ。偶然知り合った時にはただの友達だったのに、いつのまにか親友を飛び越して妙な恋慕を抱いてしまっているような。……ありがちな青春の勘違いだと思いたい。思いたいのに、これである。
しかも問題なのが、綺麗な女の子が目の前に居るからどきどきする! じゃなくて、綺麗な女の子の格好をした新一が目の前に居るからどきどきする! なのだ。まいった。これでは本当に、まるで、いやそんな。

「なあ快斗ぉ」

何故か甘ったるい声で俺の名前を呼ぶ。痛むほどに心臓が跳ねたけれど、そこはポーカーフェイスでやり通す。夜の舞台よりこれはずっときつい。何せ相手は探偵だ、ちょっとの同様も表に出すことはできない。
顔を上げれば、鏡越しに新一と目が合った。気のせい気のせいとやり過ごそうとするけれど、新一の視線があまりにもしっかりしているのでどうにもそらせないまま、硬直してしまう。
と、コトリ、新一が首を傾げた。なんだその可愛いの。

「今ならお前、落とせる?」

時間が止まった。
それから、鼻を擽った甘い香りで目が覚める。薄く開けておいた窓から入り込んだ風が、どうやらそれを届けたらしい。新一の前髪が微かに揺れて、新一がうるさそうに瞳を細めた。重なる、睫の音が聞こえた気がした。

思わず頷いた俺は断じて悪くないと思う。

頷いてから後悔した。なんせ鏡の中に映った俺も新一もなんでか真っ赤だったし、俺は動揺して新一まで真っ赤だったということに気づくのに三日かかった。見れたもんじゃねえな怪盗キッド。ゴメン父さん。いやそんなことよりも、これはまずい。とてもまずい。
いろんな物を蹴っ飛ばしながら部屋を出る。勢いよく扉を閉めて、ずるずると壁に寄りかかった。口を押さえてなければ、変なうめき声が出てしまいそうだ。もしくはエクスとプラズム的な何かが。ピンク色した。

「しくじった……」

せめてあの唇が、酷く苦いものだったのなら、きっと俺を止めてくれるに違いないのに。





テオ http://theobald.blog64.fc2.com/
2009/02/23(Mon) 02:00:21

「寂しいよ」

 勝手に寝転んだベッドの中から快斗が訴えかけてきた。ちょうど本の中の事件が一段落したところで、あとは探偵が謎を解くだけというあたりだったから俺は顔を上げてやった。そういえばいつのまにか部屋まであがりこんでいた気がする。家に入っていたのはわかっていたが、侵入者が誰かとわかった時点で気を張るのを止めたのでいつ部屋に入ってきたのかは知らない。家に入り込んですぐにこの部屋に訪れたのなら、ゆうに1,2時間は経っているだろう。
寂しいよ、なんていつもより弱々しい響きの言葉だ。珍しい、と快斗の顔を凝視してみれば、どうにも俺を見ていないようだった。視線がどこか遠くへ飛んでしまっている。
なんなんだ一体。 

「死んでしまうかもしれない」 

 瞳は俺をとらえていないが言葉ばかりは切実だ。死んでしまうかもしれない。声だけ聞けば思わず止めたくなる程には苦しげな。
しかしやはり瞳は俺を見ていないのだ。どこともない場所、あえて言うなら天井の電灯の少し横あたりをぼんやりと見つめている。瞼は半分閉じられていて、ピントがちゃんと合っているかどうかすら定かではない。
もしかしてこいつ、相手してもらえないからこんな手に? いやいやそれにしても回りくどすぎる。 

「す、好きなんだよ?」 

 一瞬言葉が止まった。噛んだ、呼吸の場所を間違えた、というような感じではなく、何を言うべきか迷ったようなどもりかただ。どもったとも言えないかもしれない。
しかも疑問系だ。問いかけを期待した問いかけ、それによるクエスチョンマークではなく、疑問系の中の疑問系、「これで良いのか?」といった具合の語尾の上がり方だ。
一体こいつは何をやっているんだろうか。ヒラヒラと目の前で手を振っても反応は無い。目は開いていても、やはり何も見ていないらしい。 

「切ないんだ」 

 にしてもこの声はいけない。だんだんぼんやりとした目も憂いを帯びているように見えてきた。馬鹿らしいことだがそれでもその呆けた顔は拗ねているようにも見えてくる。声の効果は絶大だ。ポツリ、と、落とすように呟くものなので。

 ――寂しい。死んでしまうかもしれない。好きだ。切ない。

 相手しないのなんていつものことで、勝手に入ってくるそっちが悪いのに、何故だか俺が責められているような気になってくる言葉が選ばれている。
言葉が選ばれている? 

「素知らぬふりしないでよ……あ、」 

 言い終わったところでようやく俺に気づいたらしい快斗がパチリと大きく瞬きした。本当に今まで俺が間近で見ていることを知覚していなかったらしい。そう、俺が間近で見ているのを。
いそいそと離れてみながら、俺はあきれた。何をやっているのかと。 

「新一」 

「はいアウト。し、二回目」 

「え」 

 何をやっているのか。
さ・寂しい。し・死んでしまう。す・好きだよ。せ・切ない・そ・素知らぬふりしないで。ただのさしすせそ作文だ。あいうえお作文ならぬ。相変わらず快斗は馬鹿馬鹿しいことをしているだけだ。そして馬鹿馬鹿しい俺も思わず釣られてしまったと。
座り直して本を開く。こういう時はとっとと本の中の世界に戻ってしまうに限る。 

「気づいた? さしすせそ作文」 

 俺が応えないでいるとどうやら拗ねたらしくベッドの上をゴロゴロと転がっている。子供じゃあるまいし、と思ってから、そういやコドモかと思い出した。こういう顔ばかり見ていると忘れかけてしまう夜の顔。いっそあちらの方が大人じゃないかと突っ込みたくなってしまう。 

「母さんが言ってたんだよねえ、自分の気持ちがわからなくなったらさしすせそ作文してみなさいって」

  聞いてもないのにしゃべり出す。いつもの快斗だ。俺は少し安心して印字された文字を読み始める。 

「俺、寂しかったんだなあ」 

 思わず顔を上げてしまった。そうすればニッコリ笑った快斗と目が合って、頁をめくりかけた手が途中で止まった。指から離れた頁がパラパラと捲れていく。 

「これから相手して欲しい時はさしすせそ作文することにする」 

「……勝手にしてろ」 

 言いながらさっき見失った頁を探す自分がちょっと馬鹿っぽい。縋ろうとして足蹴にされた快斗に比べれば、まだマシな方だとは思うのだけれど。




月にユダ http://2shin.net/berbed/

2009/02/18(Wed) 06:36:00

 目が覚めたら夕方だった。

 畳の上から起き上がると、顔の上から乾いた音を立てて枯れ葉が落ちた。どうやら、障子を開け放していたために庭から吹き込んできたらしい。縁側のすぐ側で寝ていた所為もあるだろう。風で痛んでいないだろうかと周りに散らばったいくつもの本を見回す。失われたものが無いらしいことを確認できると、自然と肩が降りた。

 自分の隣でカサカサと揺れていたそれを拾い上げれば、桜の葉らしかった。いっそ美しく紅葉した葉が秋の緩い風に揺られる。夢から抜け出したばかりの頭は上手くはたらいてくれず、何を思うでもなくぼんやりとそれを見つめる。

 

「何してんの」

 

 声をかけられた瞬間に指がゆるんで、風にさらわれた枯れ葉が縁側の向こうへと飛んでいった。思わず視線で追いかけると、それを自然に拾い上げる綺麗な指先が見えた。

 快斗だ。

 学生服姿で摘んだ枯れ葉を眺めている。ひときわ大きな風が吹いて彼の羽織った短い黒マントを揺らした。学生帽が風にさらわれて、あちらこちらに跳ねた癖毛が現れる。室内にも入り込んだその風は数枚の頁をまくっていった。ぼんやりと眺めて、まるで見えない誰かがだらだらと読んでいるようにも見えるなあと馬鹿らしいことを思う。

 

「こら、また此処で寝てただろ」

 

 いつのまに移動していたのだろうか。縁側に乗り上げた快斗が手を伸ばして頬に触れると、微かな痺れのような痛みが走る。

 

「畳のあとがついてる」

 

 今日は風が強い。強風が吹かない間もひらひらと隙間を縫うように肌を冷やす風が吹いている。その風が、俺の頬をなでていない方の指に挟まれている枯れ葉を庭へと飛ばす。空中に一度舞ったそれはゆらゆらと落ちて俺の見えないところへと行ってしまった。

 不意に不安に襲われる。強烈なまでの寂しさに胸が大きく波打つ。何故だろう。おかしいだろう。

 快斗は此処に居るのに。

 頬から離れようとした指先を咄嗟に捕まえる。驚いた快斗の顔がすぐ側にあって、あと少し近づけば親密な距離に成り得る近さだ。先程とはまったく違った風に胸がざわめいた。






***
許可もらってないので駄目だった教えてください^q^わかる人にだけわかるという
最近パロが好きすぎる…

2009/02/18(Wed) 01:54:45
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