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妄想散文置き場、時々日記。小説リストは左からどうぞ。(R)は18歳以下は見ちゃ駄目よ☆です。
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2024/11/24(Sun) 02:27:57
 最近晩飯が美味く食えない。それには、俺は古泉に嫌われているらしいことが原因している。
 そう、俺はどうやら古泉に嫌われているらしかった。しかしまだそこらへんがはっきりしないのは、古泉が俺との同居を快諾したあたりがあるからだ。
 同居は、始めてから三ヶ月程経っただろうか?
 高校の頃、今となってはすでに思い出になってしまったSOS団の頃とあまり差異無い関係性のまま、だらだらと三ヶ月。そんな中で何故俺が古泉に嫌われているなどと思い出したのか。答えは明瞭だ。
 奴は俺に必要以上に近寄らない。帰っても自室にすぐ消える。顔を合わせても最低限の会話と挨拶だけ。そして何より――……

「あいつ、俺に絶対触んねえんだよなあ」

 閑寂としたリビングに独り言が空気に溶けながら響いて、ハッと俺は我に返った。何をしているんだ俺は!
 寝そべってダラケていたソファから体を起こす。古泉のことなんざ考えてる暇はない、俺は忙しいんだ!
 何せまだ帰ってから着替えてないし鞄も放り出したままだし今日は俺が当番だから晩飯だってつくらなきゃならん、やっておかなけりゃ古泉にまた何と言われることか!
 鞄を拾い上げ上着を脱ぎながら自室に急ぎ足で向かう。帰ってきて晩飯つくってなけりゃ「やはり僕が毎日つくった方が良いのでは? お忙しいんでしょう?」などとのたまいつつあの馬鹿にしたような涼やかな笑顔で呆れたふうに肩を竦めるに違いない。忌々しい!
 上着と鞄をベッドの上に放り投げ、またリビングへ舞い戻る。窓を開ければ爽やかな夜風が俺の横を通り抜け、俺はそれを遮るようにカーテンを閉めた。それからキッチンへ戻り冷蔵庫を調べる。卵とソーセージとレタスとキャベツ、牛肉のぶつ切りに牛肉のミンチ、あと手羽先。さて何を作るか。
 明日にでも買い物に行かないとな、なんて思いながら野菜室からレタスを取り出し何枚かちぎっていく。案外あれで古泉は子供舌だからケチャップ系でまとめりゃ何も言わねえだろう、などと頭ん中でメニューを考えながらレタスをバリバリちぎっていく。
 そんなこんなしていたら玄関からガチャガチャと鍵を開ける音がして、俺はミンチを楕円形に纏める動きを止め、キッチンから顔を出して玄関を覗いた。タイミング良く扉が開いて古泉がヒョイと顔を出し、パチリと瞬いてキッチンから顔を出している俺を見つけた。

「ただいま戻りました」

「ああ、おかえり」

 いつもどおりの笑顔にヒラリと手を振ってやれば小さく会釈する。何年の付き合いだと思ってんだなんだその他人行儀さはと俺は言ってやりたくなったが、物事に波風を立てるのはあんまり好きではない。から、俺は投げつけたい言葉をぐっと飲み込んでキッチンの中に顔を引っ込めた。
 丸め終わったミンチをフライパンでじゅうじゅうやっていると、家の中だというのにやたらとかっちりした服装の古泉がひょいとキッチンに顔を出した。

「何か手伝いましょうか」

 その白いシャツが汚れても良いならな、という言葉をまた飲み込んで、俺は一度だけ頷いた。肉を焼きながら斜め後ろに立った古泉に向かって「胡椒取ってくれ」と手のひらを差し出す。

 「はい、どうぞ」

 手のひらに優しく乗せられた胡椒を握りしめて、「やっぱおまえあっち行ってろ」と言えばすんなり古泉は従った。キッチンから残像も残しそうにないくらいさっぱりと消えていく背中を何とも言えない心持ちで見つめる。
 ――胡椒の瓶なんて小さいもの、手渡す時は指先ぐらい触れても良いんじゃねえか?

「避けられてるよな、やっぱり」

 古泉には聞こえないように小さく呟いたセリフは自分でも驚くぐらいため息混じりで、だから今日のハンバーグが焦げたのは俺の所為では無く古泉の所為なのだ。とは古泉には言えずに、何とも言えない顔をしながらハンバーグを口に運ぶ古泉と一緒に俺は今日も悶々としながら晩飯を食う羽目になったのだった。
 ああ、忌々しい!
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2007/08/23(Thu) 04:16:11
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